もうかれこれ30年以上前になりますが、私が証券会社の支店で営業職として努めていた当時、店頭には多くの株好きが株価ボードを眺めに来店してました。互いに顔見知りになり相場談議に花を咲かせたり、中には弁当持参で立会中ずっと株価ボードにへばりついている人もいたのです。今でいえばWEBの掲示板等で相場観を語っている人達のようなもんです。どうやら自分の相場予想が的中した時の高揚感は麻薬より強烈な快感をもたらすみたいです。証券会社の店頭で株価ボードをじっと見つめている人たちはそのような快感の虜になった、まさに株投資中毒(株中)と言えるでしょう。しかし、私の知る限りでは株中の人で儲かっている人は皆無でした。
そのような人の中に情報や相場の雰囲気に関係なくチャートブックだけで儲けていた少し年配の人がいました。もちろん相場談議には加わりません。その方も若い頃は相場で随分損をしたとのことです。そこで独自の投資法を編み出したわけです。
その投資法は、過去十数年来(あるいは上場来)の安値圏にある株をチャートブックで選び少しづつ買い下がる、方法です。歴史的安値圏銘柄投資法とでも名づければ良いのでしょうか。もちろんそのような株(業種)ですから、構造不況業種で今にも潰れるのではないかとアナリストなどは評価していますので、大方の個人投資家は見向きもしません。が、丹念に少しづつ幅広く買い下がるのです。中にはそのまま倒産してしまう会社もあるかも知れませんが、分散投資することでリスクを回避していました。1社くらい倒産しても他の銘柄で儲ければ良いのです。
不況業種の会社でも新商品の開発や新分野への進出で生き残りをかけます。そして何年(あるいは何ヶ月)か後に生き残り策が功を奏して株価は上昇を始めます。買い付け平均単価の2倍になったら持ち株の一部を売り、3倍になったらまた残りの一部を売り、と売り上がっていきます。根気と辛抱が必要な投資法ですが、その方は確実に儲けていました。